AI研修のRFPで良い提案を集めるには、目的・対象者・カリキュラム範囲・実施形式・評価基準・見積り内訳・セキュリティ要件を文書化する必要がある。項目が曖昧なまま発注すると、会社ごとに前提の異なる提案が集まり、比較も選定もできなくなる。

RFPの記載が薄いと何が起きるか

RFPの記載が薄いと、研修会社は自社の標準パッケージをそのまま当てはめて提案してくるため、部門ごとの業務課題に合わない内容や、金額の内訳が見えない見積りが返ってくる。「AI研修」が指す範囲は会社によって異なり、全社向けのリテラシー研修を想定している会社もあれば、特定部門の実務ワークショップを想定している会社もある。RFPで目的と対象者を明示しないと、この前提のズレに気づけないまま提案を比較することになる。

発注前に社内で次を確認しておくと、RFPの記載精度が上がる。

  • 対象部門・階層のヒアリングは済んでいるか
  • 研修のゴールを「知る」「使える」「業務が変わる」のどこに置くか合意しているか
  • 経営に説明する際の目的(生産性向上・リスク低減など)は決まっているか

これらが未確定のままRFPを作ると、研修会社への質問も評価基準も具体化できない。研修会社の絞り込み方自体はAI研修の選び方|研修会社を絞り込む4つの軸で扱っているため、RFP作成と並行して確認するとよい。

RFPに書くべき必須項目

RFPには少なくとも次の項目を書く。項目ごとに記載内容の例を示す。

項目記載内容の例
目的・背景何のために実施するか、現状の課題
対象者・階層部門・役職・人数、AI活用の習熟度
カリキュラム範囲リテラシーか実務ワークショップか、扱うツールの範囲
実施形式集合型・オンライン・ハイブリッド、回数と時間数
講師・体制講師の実務経験、質問対応の窓口
評価方法理解度確認の方法、業務適用後の効果測定指標
見積り内訳受講者数・回数ごとの単価、教材開発費、追加費用の条件
スケジュール提案提出期限、実施希望時期、選定プロセス
セキュリティ要件使用ツール、データの取り扱い、既存システムとの連携

この一覧のうち見積り内訳とスケジュールを省くと、提案の比較が金額の総額だけになりやすい。総額が同じでも受講者数や回数の前提が異なれば1人あたりのコストは大きく変わるため、内訳を明記させることが比較の土台になる。費用の変動要因そのものはAI研修の費用相場|リテラシー研修〜実装ワークショップの目安で解説している。

情シス視点で外せない記載事項

情シスがRFPに関わる目的は、推進を止めることではなく、リスクを可視化した上で確認事項として提示することにある。禁止条項として書くと現場の反発を招きやすいため、質問形式で盛り込むほうが実務上機能する。

RFPのセキュリティ要件欄に、次の質問を明記しておく。

  • 研修で使用する生成AIツールは何か、社内で既に許可しているツールと重複・矛盾しないか
  • 演習で入力する情報は社外のサーバーに送信されるか、送信される場合の保存期間とアクセス範囲はどうなっているか
  • 受講者の学習履歴・アカウント管理は既存のID管理システムと連携できるか
  • 研修目的で一時的にアカウントを発行する場合、研修終了後の権限剥奪手順はどちらが担うか

これらを問わずに研修を始めると、受講者が個人契約のツールを業務に持ち込む、いわゆるシャドーAIの温床になりやすい。RFPの段階で使用ツールと運用ルールを研修会社に提示させておけば、研修そのものが統制の一部として機能する。

良い提案を選ぶための評価基準の書き方

評価基準に金額だけでなく、定着支援と効果測定の設計を含めることで、実施後に使われない研修を避けられる。ツールを全社に配布しても利用が定着しにくいのは一般的な傾向であり、成果の大部分は研修後の運用や業務プロセス側で決まる。RFPの評価基準欄には、次のような質問を並べておくとよい。

  • 研修後のフォローアップ(質問対応・実践課題のレビューなど)は含まれるか
  • 効果測定の指標は「受講満足度」か「業務適用件数」か、どちらを主に見るか
  • 過去に類似規模・業種で実施した実績はあるか

これらへの回答内容を提案の比較表に加えれば、金額の多寡だけで選ばずに済む。契約前に確認すべき事項はAI研修の契約前チェックリスト4項目にまとめてあるので、RFPで集めた提案を絞り込んだ後の最終確認に使ってほしい。研修とコンサルのどちらが自社に必要かで迷う場合は、目的を選んで数問答えるだけの診断も利用できる。